【洗口剤】マウスウォッシュを使えば歯磨きしなくていい?

CMでよく見かけるようになったマウスウォッシュ=洗口剤。

非常に万能なもののように宣伝されているため、患者さんでも結構マウスウォッシュを固く信頼している方がいます。

しかし、実際はどうなのでしょうか?

今回はマウスウォッシュ【洗口剤】についてまとめました。

この記事を読んでわかること

  1. マウスウォッシュってなに?
  2. マウスウォッシュにはどんな種類があるの?
  3. マウスウォッシュの使い方
  4. マウスウォッシュを使っていれば歯磨きしなくても大丈夫?

1.マウスウォッシュってなに?

マウスウォッシュ(洗口剤)とは、口に含んでぶくぶくうがいをする、殺菌作用や口臭予防作用のある液体製品のことです。

口の中にはたくさんの常在菌がいて、食事やジュースなどを摂取するとそれをエサとして細菌が繁殖します。

これらの細菌はねばねばした物質を作り出して、歯の表面に強固にくっつくのですが、この塊をプラークと言います。

むし歯や歯周病は、細菌の出す酸(排泄物)や炎症物質などが原因で引き起こされるため、この細菌の塊であるプラークを取り除くことが重要なのですが、マウスウォッシュにはこのプラークを破壊したり殺菌したり、プラークの再沈着を防止したりする効果が認められています。

一方で、マウスウォッシュは歯茎の中0.5mmより深いところには及びません。したがって、歯周病で深い歯周ポケットがある部分には大きな効果が期待できません。

多くのマウスウォッシュは、コップのお水に数滴落として希釈して使用します。

いろいろな香りや味、成分のものがあり、自身の好みや目的で市販のものを購入したり、歯科医院で症状に合ったものを処方されたりする場合もあります。

【歯科用語】プラーク(plaque)

2.マウスウォッシュにはどんな種類があるの?

マウスウォッシュには大きく分けて2種類あります。

①歯面やプラーク(歯の表面についている細菌の塊)表面に付着して作用するもの

マウスウォッシュのうち水溶液中で強い陽イオン性を示す製品は、負に帯電しているプラークや細菌、歯面、粘膜面にくっつき、殺菌効果を発揮します。

また、歯面に吸着することで、プラークが再び沈着しにくくします。

このようなマウスウォッシュは、その主成分により3つに分けることができます。

・グルコン酸クロルヘキシジン(CHG)が主成分のもの

細菌の細胞壁に結合し、細胞膜を傷害することで抗菌作用を発揮します。

グラム陽性菌、陰性菌含め、幅広く抗菌作用を示し、また、歯面に吸着し、プラークの再付着を抑制します。

歯周治療におけるCHGの研究の多くは濃度0.12~0.2%であり、海外では実際に0.12%の濃度で洗口剤として広く使用されています。

一方日本では、CHGのアナフィラキシーショックが報告されたことから、原液濃度で0.05%までに規制されており、実際にはさらに希釈して使用するため0.01%程度で応用されることが多いようです。

【副作用】アナフィラキシーショック、歯の着色、味覚異常、歯石の沈着

【商品例】コンクールF

・塩化セチルピリジニウム(CPC)が主成分のもの

溶液中で陽イオンとなる界面活性作用によって洗浄効果を示し、細菌の細胞膜を変性させることで殺菌作用を発揮します。

低濃度でも静電気的に菌体に結合するため効果があり、毒性や刺激性はあまりありません。

また、CHGと同様に歯面に吸着し、プラークの再付着を抑制します。

【副作用】過敏症、刺激感

【商品例】モンダミン

・塩化ベンゼトニウム(BTC)が主成分のもの

CPCと同様に陽イオン界面活性作用によって洗浄効果を示し、カンジダなどの真菌や細菌に広く抗菌効果を発揮します。

グラム陽性菌には陰性菌よりも低濃度で殺菌作用を示し、プラーク形成も抑制します。

【副作用】過敏症、刺激感

【商品例】ネオステリングリーン

②プラークの深部へ浸透して作用するもの

非イオン性を示すため歯面やプラーク表面への吸着は弱いですが、プラーク内へ浸透し、短時間で殺菌作用を発揮します。

このような薬剤成分としては、次の3つがあります。

・ポピドンヨード(PI)

ヨウ素の酸化作用によって細菌のたんぱく質合成を阻害し、広く強い殺菌作用を発揮します。

洗口剤としては0.5%のものを希釈して0.1%程度にして使用します。

非常に強い殺菌作用を持ちますが、金属を腐食するのでインプラントや金属のかぶせ物・詰め物をしている人は使えません。

また、甲状腺機能に問題がある人も使うことができません。

【副作用】アナフィラキシーショック、発疹、口腔粘膜びらん(ただれ)、口の中の荒れ

【商品例】イソジン

・エッセンシャルオイル(EO)

植物由来の揮発性の芳香物質を含む有機化合物で、以下のような複数の天然由来成分を含みます。

  • メントール
  • サリチル酸メチル
  • チモール
  • ユーカリプトール

殺菌作用や抗炎症作用があります。

【副作用】アルコール含有製品でドライマウス、味覚障害

【商品例】リステリン(アルコール(エタノール)、ノンアルコール)

3.マウスウォッシュの使い方

以上のように、マウスウォッシュにはさまざまな種類のものがあることがわかりました。

これらの特徴を踏まえて、より効果的に使用するにはいつ、どのようにしたらよいでしょうか?

基本的には商品の使用方法に沿って使用するのですが、たとえばブラッシング後のプラークの再付着を抑制するために洗口剤を使うなら、そうした効果のあるグルコン酸クロルヘキシジン(CHG)や塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化ベンゼトニウム(BTC)を含む洗口剤を、ブラッシング後に使用するのがよいでしょう。

しかし、歯磨き粉に含まれる発泡剤や研磨剤は負に帯電しているため、プラスを示すこれらの洗口剤の効果を減弱してしまう可能性があります。

その場合は水でよくうがいをして歯磨き粉を吐き出してから洗口剤を使用するのがよいのですが、そうすると歯磨き粉に含まれるフッ素の効果がなくなってしまいます。

したがって、ブラッシング後は30分ほど時間をあけて洗口剤を使用するのがよいようです。

また、歯磨きせずに洗口剤を使うような場合は、形成されたプラークに浸透して効果を発揮するようなポピドンヨード(PI)やエッセンシャルオイル(EO)を含む洗口剤を使用する方が効果的でしょう。

ただ、洗口剤は歯茎の中深くには作用しないので注意が必要です。

4.マウスウォッシュを使っていれば歯磨きしなくても大丈夫?

現在はさまざまなマウスウォッシュが販売されており、最近ではCMでもよく見かけるようになりました。

マウスウォッシュを使えば口臭がなくなり、むし歯や歯周病が防げるのではないかと思っていらっしゃる患者さんもよく見かけますが、実際にはそうではありません。

歯科医院でプラークの染め出しをしてブラッシング指導を受けたことがある人はわかるかもしれませんが、細菌の塊であるプラークは歯ブラシでかなりこすらないと除去できません。

マウスウォッシュにはプラークに作用し殺菌効果がありますが、むし歯や歯周病を防ぐほどの効果はないでしょう。

やはり基本は歯ブラシで機械的に細菌を除去することが大切です。

まとめ マウスウォッシュは補助的に使おう

今回はマウスウォッシュの種類と特徴をまとめました。

むし歯予防や歯周病予防、口臭予防には、”マウスウォッシュさえ”使っていればOKというわけではなく、やっぱり歯磨きが基本であることをお伝えしました。

しかし、マウスウォッシュも使い方を工夫すればとても効果的に使用できるでしょう。

たとえば、どうしても歯磨きができない高齢者や精神疾患のある人、インプラント手術後で歯磨きを制限されている人などはマウスウォッシュを補助的に使用するのがよいと思います。

またそのほかの人でも、マウスウォッシュの爽快感や口臭を抑える効果を得たい人は、歯ブラシが基本であることを踏まえたうえで、歯磨きと合わせて日常的に使用してみるのもよいかもしれません。

最後までお読みいただきありがとうございました。何かのお役に立てればうれしいです!

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