前回の記事で、いい歯医者さんの見つけ方【子ども編】について考えてみましたが、今回は大人の方にとっていい歯医者さんについて考えてみたいと思います。
大人の場合は、もう抜け変わることがない永久歯列が対象になります。
また、子どもの場合はむし歯が問題になることが多いのに対し、大人はむし歯だけでなく歯周病や歯の欠損が問題になってくることが多いので、子どもにとってのいい歯医者さんと大人にとってのそれとは異なるように思います。
大人にとっての歯科治療は、やっぱりただむし歯を詰めるのが上手とかインプラントを入れられるとか、技術やスピードだけでなく、なぜそのような問題が生じたのかという原因を考え、その方が将来的にも長く健康を保てるような正しい診断・適切な治療ができることが重要になります。
ですが、こういった診断のプロセスは先生によって考え方が違ったりしますし、腕の良さは同じ歯科医師でなければわからないのではないかと思います。
そこで、わたしなりに「もし家族や友人がどんな歯医者さんに行ったらいいか困っていたらこうおすすめするかな」という観点で、歯科関係者でなくてもわかりやすいと思われる以下の3つのポイントを上げてみました。
いい歯医者さんとは【大人編】
- きちんと話を聞いてくれて、こちらが納得できるまで説明してくれる
- 歯科医院にパノラマエックス線写真やCT、マイクロスコープなどの設備がある
- ラバーダムを使用してくれる
- 【番外編】ドクターの出身大学や大学院はあまり関係ない?(例外あり)
1.きちんと話を聞いてくれて、こちらが納得できるまで説明してくれる
技術的なことは同じ歯科医師が間近で見てみないとわからないため、せめて人柄の部分が誠実で向き合ってくれるような歯医者さんでないと、みんな安心して通院できないのではないかなぁと思います。
たとえば、
- いつも忙しそうであまり話を聞いてくれない
- 高圧的で質問しづらい
- 質問してもこちらが理解できるように説明してくれない
- すすめられた自費治療を選ばなければ機嫌が悪くなる
嘘かと思うかもしれませんが、中にはそんな先生もいるのです…。
歯科医師も人間なので性格がありますし、たまたま疲れているとかおなかが空いているとかあるかもしれません。
ですが、そういった気持ちのムラがあったり、忙しくて信頼関係が作りにくかったりする歯医者さんは、ちょっと家族にはすすめられないなぁと思ってしまいます。
心配なことやわからないことはいつでもなんでも質問できて、きちんと向き合って話を聞いてくれ、レントゲンなどを用いながらどこがどのように悪くて、どういった治療が必要なのか理解できるまで丁寧に説明してくれるといいなぁと思います。
加えて、「将来的にこのようなリスクがあるから今(あるいは別のタイミングで)こういった治療をしておいた方がよい」など、問題の一時的な解決でなく長い目で健康を考えてくれるような先生だとなお安心ですね。
また、いいにくいことも正直に伝えてくれる先生も個人的には好きです。
治療の技術がよいのはもちろんのこと信頼して安心して治療を受けられるように、家族や友人には人柄が誠実な歯医者さんをおすすめしたいと思います。
2.歯科医院にパノラマエックス線写真やCT、マイクロスコープなどの設備がある
これは客観的にわかりやすいポイントではないでしょうか。
パノラマエックス線写真(パントモ)とは、顔の周りをぐるっと回って撮影するレントゲンで、顎の関節や全部の歯や特定の神経の走行を見ることができる2次元のレントゲンです。
またCTはパノラマエックス線写真と同じで顔の周りをぐるっと回るレントゲンですが、顎の骨や歯を3次元で確認することができます。そもそも立体である顎や歯を扱うので、パノラマエックス線写真では写らない情報も得ることができます。
今やパノラマエックス線やCTがない歯科医院は少ないと思いますが、これらは正しい診断や適切な治療計画を立てるためになくてはならない設備です。
したがって、どんなに腕が良く経験のある歯医者さんでも、これらの設備がなければ正しい診断ができる保証がありません。
またマイクロスコープとは大きな顕微鏡のようなもので、目では到底見えない部分を見たいときに使うアイテムです。よく「マイクロ」と呼ばれています。
根の治療をしてもなかなか治らなかったり、問題なさそうなのに痛みがあったりする歯をこのマイクロで見てみると、根の先に汚れが残っているのが見えたり、実は目には見えないヒビが入っているのが見つかったりして、原因がわからず対処ができなかった歯の真の原因がわかったりします。
マイクロはまだない歯医者さんも結構あるかもしれませんが、特殊な原因がある歯の治療に関しては今後必須になってくる設備と言えるのではないでしょうか。
もしこれらの設備がない歯科医院でも、必要に応じてこういった設備のある病院に紹介してくれるのであればいいですが、たいていは自院でなんとか治療をしてしまうことが多いのではないかと思うので、もとからこれらの設備がある歯科医院の方がいいのではないかなと思います。
3.ラバーダムを使用してくれる
ラバーダムとは、むし歯や根の治療の際に唾液(に混じった細菌)が入り込まないように歯にかける薄いゴム製のマスクのようなものです。
これをしなくても治療ができないわけではなく、病気が治らないわけではありません。
また、歯科医院からすると、これを使用しても保険点数になる(儲かる)わけではなく材料費だけかかり、しかも1~2分とはいえ準備に時間がかかるので、保険診療で忙しい歯科医院ではラバーダムを使用しないところも多いのではないかと思います。
しかし、わたしたちが相手にしているのは目に見えない細菌たち。
唾液や呼気の中に含まれた細菌や水分が詰め物の間に入り込んだり根の中に入り込んだりすると、詰め物の下がまたむし歯になったり、根の先の病巣が治らなかったりすることがあります。
ラバーダムを使わなくても治ることもありますが、使った方が治る確率をアップすることができます。家族や友人には必ずラバーダムを使って治療を受けてほしいと思います。
お金にならないラバーダムだからこそ、そうしたアイテムを患者さんのために使って丁寧に治療してくれる歯医者さんは、良心的でよい歯医者さんと言えるのではないでしょうか。
4.【番外編】ドクターの出身大学や大学院はあまり関係ない?(例外あり)
個人的には、これまでの経験から、結局ドクターの出身大学や大学院などは通常の歯科治療にはあまり関係がないように思います。
キャラクターの違いというか、雰囲気の違いはあるように感じます。国立大学出身の先生は比較的地味な感じとか、私立大学出身の先生は二世であることが多く比較的華やかな感じとか…(個人の感想です!)
また、大学によって受けてきた教育が違うので、治療の考え方などに多少のカラーはあるかもしれません。
そのあたりは個人の好みや相性になるかと思いますが、歯科治療はやっぱり一種の外科。技術職ですので、結局腕の良さはその歯医者さん次第だと思います。したがって、出身大学や大学院はあまり関係ないのではないかなぁと感じています。
しかし、例外もあります!
インプラント治療や歯列矯正は、指導医や認定医などの資格を持った歯医者さんをおすすめしたいです。
インプラント治療や歯列矯正は、実はちょこっとセミナーを受講して「よしできる!」と歯科医師が思えばできてしまうのです。
しかし、インプラント治療は外科的な知識や嚙み合わせの知識、顎や口の中にどのような神経がどのように走行しているかなどの知識など、かなり専門的な知識が必要な分野です。
歯列矯正もただ歯並びをきれいにすればよいわけではなく、一番大切なのは「一生問題なくよく噛める噛み合わせ」を作ることであり、こちらも相当な専門知識が必要です。
したがって個人的には、もし家族がインプラント治療を望んだり友人が歯列矯正を受けたいと相談されたりしたら、インプラントなら「指導医」、矯正なら「専門医」をおすすめします。
ちなみに、インプラントでは
指導医>専門医>専修医
の順で資格取得が難しく、矯正歯科では
専門医>臨床指導医>認定医
の順で資格が難しくなっています。
各県の指導医、認定医の先生は、日本口腔インプラント学会や日本矯正歯科学会のHPから探すことができます。
まとめ
いかがでしたか?
歯科関係者でなくても、上記3つのポイントであればジャッジの参考にしやすいのではないかと思います。
わたしも自分で書きながら、こんな歯科医師でありたいと改めて思いました。
ぜひ、みなさんそれぞれにとってよい歯医者さんに出会い、お口の健康がますます増進されますように願っています!